名古屋市最高峰・東谷山
名古屋市守山区と瀬戸市の境界に、名古屋市最高峰・東谷山があります。
最高峰と言っても、標高は198.3m。
カワイイ♡(笑)
登山をする人に言わせれば、「山なのか?!」と言われるかもしれませんが、その山容は立派な「山」です。
西側から見る東谷山は結構いいシルエットをしていて好きなのです。
(写真ないので今度撮りますw)
東谷山は、「とうごくさん」と読み、尾張の国名「当国(當国)」から転じたと言われています。
この東谷山一帯は「東谷山自然環境保全地域」として、愛知県条例によって保護されています。
山頂部に古墳があったり、尾張戸神社があるからなのか、開発されることもなく、山腹には豊かな自然が残っています。
麓の湿地にはシデコブシ(IUCNレッドリスト・絶滅危惧種(EN))が自生していて、春になると真っ先に花を咲かせます。
シデコブシについて書いた記事はこちら↓
東谷山の豊かな自然を象徴するのはシデコブシだけではありませんよ。
他にも日本固有種で東海三県にしか自生しない絶滅危惧種の湿地植物が自生していますし、ムササビやニホンリスなどの動物も生息しています。(目撃したことはありませんけどね)
国の特別天然記念物であるカモシカもこの一帯でよく見られます。
(東谷山ではありませんが、カモシカには二度遭遇したことがあります)
東谷山も含まれる尾張東部丘陵一帯は、陶器生産のためハゲ山が広がり荒れていた時代もあるのですが、植生を見ていると東谷山だけはあまり伐採されずに残されている感じがしました。
神域として大切に守られてきたのでしょうね。
山頂・尾張戸神社
東谷山の山頂には尾張戸神社があります。
尾張戸は「おわりべ」と読みます。
創建は西暦135年と伝えられていて、2世紀といえば、日本は弥生時代後期。
世界史で言えば、ローマ時代五賢帝の頃ですね。
後述しますが、本殿の下にある古墳は4世紀頃のものなので、その頃はもしかしたらこの地にはなかったかもですけどね。
それでも、その頃から御祭神を祀っていたと思うと歴史を感じます。
その後、「東谷山は熱田奥の院」と呼ばれたり、名古屋城の鬼門にあたることから尾張徳川家の信仰も篤かったようです。
わずか標高198mとは言え、山頂からは濃尾平野を見下ろすことができるので、平野部から見れば目立つ山だったのでしょう。
それが鬼門にあるとすれば、崇敬されるのも不思議ではないですよね。
山頂部は意外に広く、拝殿の他、社務所やトイレ、展望台、テラスもあります。
登ってきて一休みするにはもってこい。
天気の良い日に、展望台やテラスから眺める景色はとても心地よいです。
真夏以外であれば、ランチを持って登ってくるのもありでしょうね。
社務所は常時人がいるわけではなく、貼り紙によると、神事がある時や毎週土曜日の9〜10時には御朱印もいただけるようです。
本殿神域にはタイルが敷き詰められています。
これは非公開なので、遠目にしか見ることはできませんが、公式ホームページに画像があるので一度見てみてくださいね。
社名が書かれた額も陶板です。
さすが「せともの」の街・瀬戸市にもまたがる神社ですね。
瀬戸の陶工たちの信仰も篤かったのでしょう。
瀬戸市学術員の調査によれば、この敷タイルは明治初期から現在に至るまでの27種類を数え、瀬戸の敷タイルの博物館と呼べるそうです。
また、山頂部にはモミジやサクラの木があり、季節ごとの眺望に彩りを添えてくれます。
尾張戸神社古墳
尾張戸神社の本殿、中社、南社は古墳の上にあります。
古墳はいずれも4世紀〜4世紀半頃のもの。
西暦でいうと300~400年頃。
最初は「古墳?! こんなところに??」と思ったものですが、実際目にしてみると、よく現存してるなぁというのが正直な感想です。
少なくとも1600年前のものですからね。
そんなものが身近にあって、触れることができるわけですから驚き以外何者でもありません。
2014年には周囲の古墳とあわせて「志段味古墳群」として、国の史跡に指定されました。
国の史跡に指定されたあと、東谷山内には立派な説明がたくさん立ち、きれいに整備されているので、とてもわかりやすいですよ。
山頂に至る道・南参道
山頂までのルートは4つあります。
いずれもだいたい20分程で山頂に辿り着けます。
南参道には駐車場があり、東谷山の自然を満喫できるルートなのでオススメです。
入口には鳥居はなく、常夜灯があります。
この常夜灯を越えて森に足を踏み入ると、空気感がガラリと変わります。
背筋が伸びるような緊張感というか、畏怖の念みたいなものがピキーンとやってきます。
実は近くに住んで20年になりますが、一向に近づく気になれませんでした。
なんというか、気やすく近づいてはいけないような…
そんな感覚がありまして。
少なくとも1000年を越える古社であり、歴史があるということはそれだけ祈りのパワーが込められている証。
畏多くも近付き難かったのは納得がいきます。
それがなぜ今というタイミングで近づけるようになったかは謎です。
それも意味があることでしょうから、わかる日まで、「呼ばれてるタイミング」ってことにしておきましょう。
いつかきっと、「あー!そういうことだったのね!」とわかる日は来ますからね。
それまでは問いを立てたままにしておきます。
途中、東参道との合流点までは山道です。
最初は緩やかであるものの、登るにつれ斜度は少しずつきつくなります。
森は常緑樹が多いので冬でも緑濃く、野鳥の声がよく聞こえます。
森の中をよく見ると、調査のためのカメラが設置してあったりもします。
また、南参道の下部にはこんな貼り紙もありました。
うーん。
盗掘ですかー
県条例で保護されているだけでなく、東谷山に残された貴重な自然を後世に残そうと地道な活動をされている方がたくさんいらっしゃいます。
この記事を書くためにいろんな文献を読みましたが、調べれば調べるほど東谷山に残されている自然がどれだけ貴重なものか身に沁みました。
自然というのはバランスで成り立っています。
そこにある何かひとつでも欠けることによって崩れてゆくものです。
そして人間もまた自然界の一部分です。
自然な形で消滅していくのは自然界の理なので仕方がありませんが、そうでないのは悲しいですね。
特に植物は身の危険が近づいても自力で動けるわけではありません。
人間という脅威がやってきても、悲鳴を上げることも、走って逃げることもできないのです。
そして、そこへ救いの手を差し伸べてあげられるのもまた人間にしかできません。
人間に授かった理性と知性と愛で、自然界のバランスを自らの手で崩さないようにしたいものですね。
参道を登ってゆくと、ちょっときつくなったなぁ〜と思った頃に、左手に南社への道が現れます。
南社への道は平坦なので、そちらに誘惑されそうになりますが、山頂をめざすなら、頑張って直進して登り続けましょう。
やがて、右手から来る東参道にぶつかります。
そのT字路を左に折れ、そこから山頂までは石段の道。
階段嫌いには辛いところですね〜
中社への道が分かれるT字路にぶつかり、右に折れると山頂の拝殿が見えて、石段をあと一登りです。
お疲れさまでした!
山頂の紅葉
紅葉の足並みが遅かった2019年。
12/1に登ってもモミジの紅葉がとても美しかったのでお裾分け♡
身近に貴重な自然が残されているのは豊かなことだと思います。
名古屋市内でもここまでの自然が残っているところは珍しいようです。
是非、季節の良い時(桜・新緑・紅葉)に、周りの自然を愛でながら登拝してみてくださいね。
虫嫌いの人は晩秋〜早春の頃をオススメします。
低山なので冬でもそんなに寒さを感じることはありませんね。
足元ばっか見て登ってても楽しくないですよ〜(笑)
しんどい時こそ森や空を見上げて、自然界からパワーをもらいましょう。
この貴重な東谷山の自然が後世に残るよう、大切にしていきたいですね。