一般病棟に戻って、ひとつずつ、ひとつずつ、回復へ向けて歩みがはじまりました。
下痢が止まらない…
昨日からはじまった食事がわりの「栄養」。
栄養カウンセリングを受けているまごめじゅんさんからお薦めいただいた『「がん」では死なない「がん患者」- 栄養障害が寿命を縮める』
この本にも書かれていた栄養摂取が昨夜からはじまった。
初めての体験なので、実はかなり楽しみにしていたのよね。栄養。
どうやって体内に入れるかは昨日の合宿日記に書いたとおり。
で、翌日の今日は起きた時からお腹を下しまして。
元々腸が弱いのもあるし、栄養によって下痢もするのでダブルパンチ。
栄養入れながらトイレに籠もるなんて状態で、午前だけで5回以上。
あまりに頻回なので体力も奪われる。
普段ならここまでの下痢をしたら絶食する。
体もしんどいので、看護師さんにお昼は止めることができないか相談してみた。
が、できないと言われる。
そりゃそうだよね。
ただの食事ではなく治療の一環だもん。
術後の回復に必要な栄養を摂るためだから、止めるわけにはいかない。
やっぱりかぁー とガッカリしていると、お昼から栄養の種類を変えてもらえた。
さらに、看護師さんが温めてきてくれた。
おぉ!温かい!
体内に入れる速度も落としてくれて、できるだけ刺激にならないようにしてくれた。
これならいけるかも!
2時間かけて摂取してるうちに、温めてきてくれたものはすっかり冷めちゃうけど、最初から冷たく感じるよりはマシ!
これで下痢が止まってくれるといいなぁ〜
手術前の生活へ
栄養を摂取しはじめたのもあって、昨日までの寝たきりから、普通に起きて生活できるようになった。
トイレはもちろん行けるし、点滴スタンドを転がしながら病棟内を歩けるようにもなった。
まだふらつくから他のフロアは怖くて行けないけど。
朝からお見舞いに来てくれたけんちゃんと、ベッドの上でまったりとした1日を過ごす。
本を読んだり、iPhoneでSNSを見たり。
「何やろうかな〜」と時折思いながら。
まだまだ回復しきれてないし、点滴の針が留置された左手が痛くて、できることは限られている。
食事に2時間かかるし、投薬や定期巡回の時間もあるから、そんなにヒマを持て余すこともなかった。
そう!
今日から入浴がOKになった。
シャワー浴でなく、一気にお風呂につかることまでOKが出た!
ICUでグチャグチャだった顔と髪をようやく洗える!
しかも温かい湯船にもつかれる!
病室にエアコンが効き過ぎてて、冷えて冷えて仕方ないんだよね。
長袖パジャマの上にフリース羽織ってなきゃ寒いくらい。
術後こんなに冷やしていいのか? って思うぐらい寒い。
温かい湯船に入れることは本当に嬉しかった!
点滴静脈注射が抜けた!
手術室で左手に刺された点滴静脈注射。
このルートがあったおかげで手術も無事終わったし、術後の喉頭痙攣でも助けられた。
体に留置されて4日目。
動けるようになってくると、腕を使うことも多いのでだんだん痛くなってきたのだ。
針は前腕の手首よりにあり、ルートは手首に固定されていて、腕を捻ると痛い。
左手で物を持つのも辛かった。
本やiPhoneを持つのも辛い。
支えるぐらいのことしかできず、長時間は無理。
かなり不便だった。
そ・れ・が、夜の抗生剤を最後に抜けた!
やったー!\(^O^)/
胃管経由で薬が飲めてるし、もう喉頭痙攣のおそれもないだろう と許可が出たのだ。
これで体に入っている管は胃管だけ。
この胃管も経口摂取が問題なくできるようになったら外れる。
経口摂取は月曜日からはじまる!
静かな病棟
病室のことを少し書こう。
わたしがいたのは4人の相部屋。
女性ばかり。
基本はこの4人部屋で男女別になっているようだった。
4人満床の部屋もあれば、2人しかいない部屋もあった。
入院している病棟のイメージってどんなイメージを持っているだろうか?
ナースコールや警告音が鳴り響き、看護師さんがバタバタと駆けつける…
昨年、けんちゃんが入院していた病棟は正にこんな感じで、夜でもひっきりなしに足音、モニターの音、話し声がしていた。
看護師さんに大きな声で話かける人もいて(時には喚く)、とても静かな印象はなかった。
こんな病棟で安静にしてろって… って、少なくとも精神的には安静なんてできないと感じてた。
ところが、わたしがいた病棟はこの真逆だった。
夜は20時を過ぎると静寂が訪れる。
夜だけでなく昼間もとても静かで落ち着いた病棟だった。
看護師さん達が落ち着いている、慌てるような事態がないというのもあるだろう。
がんの専門病院ということもあるかもしれない。
お見舞いに来てくれた人は、けんちゃんを筆頭に、入院経験がある人はみな口を揃えて言っていた。
『静かな病院!!』
でも、これには少なくともひとつ理由がある。
入院している病棟が頭頸部外科という首から上を扱う病棟のため、ほとんどの人が喉や口といった部位を手術しているからだろうと思った。
そう。
話せない。
声が出せないのだ。
だから4人の相部屋でも聞こえてくるのは看護師さんの声だけ。
患者はほとんどの人が筆談なのだ。
わたしも最初のうちは話すより書く方が早かったので筆談していた。
舌だけでなく、喉の痛みも違和感もあったからね。
口や喉といった部位は、
話すこと
食べること
呼吸すること
に関わっている。
呼吸や食べることは生きていくことに直結する。
手術するまで全然気にしてなかったのだが、口や喉って生きていくには、なくちゃならないところなのだ。
あたりまえのように使ってきたけど、こんなに大切な部位だって、入院して周りの人を見て、はじめて気がついた。
呼吸する
食べる(飲み込む)
話す
といった生まれた時からあたりまえに備わっている機能が使えないことの不便さは体験してみなければわからなかった。
呼吸できて、飲み込めて、話せることが、あたりまえにできるってすごいこと。
そう身に沁みるには充分すぎる環境だった。