心肺停止で倒れた夫のよみがえり日記 2日目
2018年7月26日
彼との未来を思い出す
前夜、LPL認定セラピストの山本尚美さんにヒーリングをお願いした時に、『雪絵ちゃん自身がグラグラしていると、彼がどこに戻ってきていいかわからなくなるから、足に意識してグランディングしてね』と言われた。
わたしが無自覚に抜けていたことがわかってくれたようだ。
尚ちゃんに「怖かった?」と聞かれた。
怖い…
不安…
口にした瞬間、涙がこぼれる。
起きてきたことに対処するのが精一杯で、「悲しい」とは感じていても、自分の気持ちに繋がってなかったと気づく。
怖い
不安
言葉にすることで、自分が感じている感情が何かがわかって、繋がれた。
本当の感情は感じれば1分ほどで流れてゆく。
言葉にして、感じて、涙と共に流れていった。
そして、尚ちゃんにサポートしてもらいながら、意図を立てる。
そう。
わたしの未来に、けんちゃんは欠かせない人なのだ。
LPLで描いた人生の樹にも、彼と実現させたい未来を書いた。
わたしが、彼との未来を信じること。
だから、帰ってくるところはここだよ と彼に伝え続ける。
それが何よりも大切なことなのだ。
愛が溢れる世界
疲れていたから早くに寝たけれど、眠りが浅い。
3時間起きに目が覚めてしまう。
そして携帯の着信を確認する。
なんとか一夜を越え、朝を迎えた。
ちょっとホッとする。
東京での疲れも取れていないから、昼までベッドの上でゴロゴロしながら過ごす。
昨日のFacebook投稿のコメントを見ながら涙が止まらない。
なんて多くの人達が、コメントと、祈りを送ってくれたのだろう。
けんちゃんも、そしてわたしも、ひとりじゃないんだ。
とても大きな大きな愛に包まれている。
なんてありがたいこと。
こんなに愛が溢れている世界だもの。
彼はきっと戻ってくる。
そう信じることができた。
まだまだ不安に心揺れるし、不意に涙が止まらなくなる。
でも、尚ちゃんに教えてもらったとおり、わたしがしっかりと軸を立てていればいいのだ。
信じて待つしかない。
それしかない。
それだけでいい。
生かされているいのち
一夜明けて、落ち着けて、ちょっとゆとりが出てきた。
前向きに考えられるようになってきた。
彼の心臓が、いつどこで倒れてもおかしくない状態と聞いた時、呆然とした。
ショックだった。
でも、会社の人がいる会議室で倒れたのはラッキーとしかいいようがない。
もし、これが、北アルプスのど真ん中なら、誰かと一緒でも、そのまま雲の上に行っていただろう。
単独行なら、そのままどこかの崖下に落ちて、姿も見つからなかったかもしれない。
前日は三重へ出張だったという。
行ける範囲はいつも車で出張する人だから、高速道路で発症していたら、間違いなく交通事故だし、下手したら誰かを巻き込んでいたかもしれない。
そう思えば、人の前で倒れて、すぐに救命措置を施してもらえて、一命を取り留めたということは、強運な人なんだと思う。
「生きよ」と言われているに他ならない。
心臓が止まって、一度は天国へ帰りかけた。
でも、まだ来るな、今はその時じゃないと神様に追い返されたんだ。
あなたには、まだやることがあるでしょ って。
明美ちゃんが「私に帰る旅」に綴っていた体験を思い出した。
あぁ、まさにけんちゃんは、明美ちゃんと同じ体験をしている。
体中、管だらけで、様々な機器が彼の生命を維持するために動いていて、機器のサポートがなければ生きていられない。
動くと大切な管が動いたり、抜けたりするので手足も縛られている。
生命を維持するために体温も下げられ、室温も20℃で管理されている。
生命を維持するために、本来体が持っている基本的な機能でさえ、心臓に負担をかけないように抑えられてる状態なのだ。
そんな状態でも、彼は生きようとしている。
端から見ると壮絶な姿をしているけど、彼の‘いのち’は生きるために全力なのだ。
人の‘いのち’は、そのお役目が終わるまで、生きようとする。
彼はまだ、そのお役目を果たしてないのだ。
だからまだ生かされているのだ。
だから、いのちが繋がったんだ。
彼の‘いのち’はまだ生きたがっている。
これを機会に、彼はきっと再誕生するのだ。
そう言えば、彼はよく冗談で、『毎年春になると頭がポロっと落ちて、フレッシュけんちゃんになればいいのに』と言っていた。
なに馬鹿なこと言ってんの。
植物じゃあるまいし っていつも笑ってた。
けど、彼の奥底には、生まれ直しの願望があるのかもしれない。
ならば、再誕生を体験したけんちゃんと、生まれ直し、生き直しを一緒に体験していくんだね。
プロセスは完璧?
LPLでは「プロセスは完璧」という言葉をよく使う。
これもプロセスなのか。
心臓が止まって、天国に行きかけることもプロセスなのか?!
こんなに心臓に悪いプロセス、いらんけど!!
衝撃が強すぎて、こっちが倒れそうだわ!
神様のアホ!
もうちょっと別のプロセスにしてもらえませんかね?
そんなことを考えていたら、笑えてきた。
でも、これぐらいの衝撃でなければ、わたしも、彼も、目醒めなかったのかもしれない。
彼は絶対大丈夫。
神様から人生やり直しを命じられて、天国に来るなと追い返された。
だから、以前以上に元気になってパワフルになる。
自信をもって、彼の復活を信じられるようになった。
明美ちゃんの『私に帰る旅』にこんな一文がある。
「先生、私、死んでる暇ないんです、やることいっぱいあって」
脳腫瘍と水頭症の治療中に、明美ちゃんが担当医の先生に言った言葉だ。
彼も夢を見ながら思っているだろう。
「俺、寝てる暇なんてないんです。
行きたいところ、見たいものがこの世界に山ほどあるから」
ふたりの約束
結婚した頃にした約束も果たしてないよね。
二人で世界を旅して歩こう。
「どこかに行こう」って話になると、
『行きたいところはいくらでもある。
データも揃ってて、俺はいつでも準備万端だぜ 』って言ってた。
あなたの行きたいところ、どれだけ行けたの?
まだ、いっぱい残ってるよね?
出かける以上に、行きたいところが増えるペースが早いから、永遠に行き尽くすことはないだろうけど(笑)
二人で地球を楽しみ尽くそう
きっとこれが、わたしたちに与えられた使命だよ。
そう決めて、今生に来てるんだよ。
だって、わたしが結婚する時にけんちゃんをパートナーに決めた理由は、この人なら一生一緒に遊び尽くせる!だもん。
けんちゃんも言ってくれたよね。
俺について来いなんてカッコイイことは言わない。
一緒に舟を漕いでいこう。
お前とならできる気がする。 って。
いつもプロポーズの言葉はありません って言ってるけどさ、わたしはこの言葉にグラッと来たんだよ。
ま、イメージしたのはなぜか泥舟だったんだけど(笑)
でも、泥でできた舟が水に溶けてなくなっても、手を引っ張ってくれてるけんちゃんがいたんだ。
一緒に川の中を、腰までつかってジャブジャブと歩いてるイメージしてた。
どこまでもアウトドアな夫婦やなぁ(笑)
だから、わたしはいつもけんちゃんと手を繋ぎたくなるのかな。
そう思うと、まだ全然、地球を楽しんでないよね。
この地球上に、行きたいところ、山ほどあるよね。
だったら、天国へ帰るにはまだ早いよ。
一瞬行きかけたけど、わたしがしっかり地球の大地にくくり直しておく。
だから、天国覗いたら、戻っておいで。
きっと地球の方が楽しいさ!
信頼
わたしが彼の‘いのち’を信頼して待てばいいのだ。
生きたがっている彼の‘いのち’の力をサポートすればいいのだ。
そう考えていたら、すごく落ち着いてきた。
ふとOSHOカードを引いてみたくなった。
「彼の‘いのち’の力を信じます。
これからのわたしの在り方を教えてください」
そう問いを立てた。
出てきたのは「THE MASTER」!!!
ハハハハハ-!
もう笑いしかなかった。
自分を信頼せよ。
あなたの存在が、彼の光になる。
そう言われて気がした。
わたしにとって、彼が希望の光だったように、今度はわたしが彼の光となり、人生に花を添える。
これからの彼の人生で、そんな存在になれたらな と思う。
2日目のようす
昼過ぎようやく重い体を起こして、病院に行く支度をする。
面会時間より少し遅れて病院に着くと次弟がいた。
病室に入ると人工呼吸に変わっていた。
昨日は自発呼吸はしていたけど苦しそうだったもんなぁ。
当直だった看護師さんも心配で仕方なかったと聞いた。
先生から人工呼吸に変わった経緯を聞いた。
心臓の治療と、呼吸できることのバランスを考えると人工呼吸器の方がいいと判断されたようだ。
人工呼吸で呼吸が安定すれば、心臓に負担をかけずに治療に専念できる。
わたしも先生の考えに賛成だ。
今は何よりも心臓の機能を回復させるのが最優先だ。
人工呼吸器を付けたおかげで、呼吸も、血圧も安定したらしい。
よかった。
先生からは、この状態を維持しながら、ひとつずつ減らしていきましょうと話があった。
めどは1週間。
心臓の働きをサポートする機器、3種類の強心剤、血圧を上げる点滴、抗生物質、体温を下げる全身を覆うアイスノン、人工呼吸器…
1週間 という言葉に先が見える。
なんとかそこまでいって欲しい。
今は切実な願いであり、希望だ。
意思の疎通がはかれた!!
人工呼吸器に切り替える時、彼が目覚めたと聞いた。
看護師さんの呼びかけに瞬きで合図したという。
さらに看護師さんとは反対側に立っていた先生の方を向こうと首も動かしたらしい!
看護師さんから、病院にいること、治療のためにラクになるまで眠ってもらうことを話たら、わかったというようにアイコンタクトしたらしい。
その後、人工呼吸器を取り付けるために彼はまた鎮静剤で眠りについた。
この時、彼とコンタクトをとってくれた看護師さんが興奮気味に話してくれた。
よかったー
自分がどこにいるかだけでも伝わったんだ。
すごく嬉しかった。
看護師さんはとっても嬉しかったようで、
『こんなこと、もしかしたら言ってはいけないのかもしれないんですけど、昨日の状態では、意思の疎通はできないと思っていたんです。
だから、とっても嬉しくって』と話してくれた。
プロとして、いろんな患者さんと接してる方があんなに嬉しそうに話してくれただけでも、わたしには嬉しかった。
彼にまたひとつ希望の光が灯った。
まだ余談は許さない
意思の疎通は取れたし、状態は安定しつつあるものの、決して良くはない。
まだ、生命の危機に瀕していることは変わらず、明日の命があるかどうかは誰にもわからない。、
先生の目にもまだ厳しさが宿る。
気を抜けない夜がまたやってくる。
先生と看護師さんにすべてを委ねて病院を後にした。
帰りの車内でも、ふとした瞬間に涙が滲んでくる。
どうなるんだろう….
そんな思いが頭をよぎる。
まだまだ揺れる。
揺れる気持ちを抑えたくなる。
でも、抑える方が辛くなる。
怖くても、不安でも、それを感じ、自分に語りかける。
怖いよね。
不安だよね。
そう思ってるわたしがいるよね。
涙が溢れてくる。
声をあげて泣いてみる。
けんちゃんへの想いを口にしてみる。
動いているあなたに会いたいよぉ
声を聞きたいよぉ
いつものように冗談言って笑わせて
辛いよぉ
あなたの温もりが欲しいよぉ。
恋しいよぉ
いつも手の届く場所にあったのに。
あるものがないって、こんなに切ないのか。
涙の泉はまだ渾々と湧き出てくる。
倒れた時のこと
夜、倒れた時の状況を会社の人に聞くことができた。
そういえば、病院に駆けつけたから、倒れた時のことは聞いてなかったのだ。
その方の話によれば、その日は全国の営業が集まる会議の日で、会場が名駅だった。
彼のオフィスは、名古屋駅からは遠く離れた場所にあり、名古屋駅までは片道2時間近くかかる。
いつもは豊田市で会議があることが多いのだが、その日は初めて名駅で貸し会議室を借りての開催だった。
幸運その1が、会議会場が名古屋駅だったこと。
彼はその場で、プレゼンをしたらしい。
プレゼンを終えて座った瞬間から、いびきをかきはじめ、その後倒れたそうだ。
驚いたのは会社のみなさんだろう。
ぱっと見、かなりヤバイと思ったらしく、会社の人の手によって心臓マッサージがはじまったらしい。
すぐに119番をしてくださったらしいのだが、なんと消防署が会議会場の目の前だったそうだ。
幸運その2である。
救急隊の方が駆けつけてくださって、すぐにAEDと心臓マッサージをしながら、救急病院へ。
病院はそこから車で10分かからない場所にある。
幸運その3だ。
時も場所も、彼は倒れるタイミングをはかっていたのか? というぐらいだ。
会社の方もそう感じておられたようで、助かって本当によかったと言ってくださった。
世界あちこちに取り引き先がある彼には、海外からもたくさんのメッセージが入っているらしい。
戻ってきて、メール開いたら、ビックリするだろうなぁ。
『もどっておいで私の元気』
今日から、明美ちゃんの『もどっておいで私の元気』を持って行って、彼のために枕元で読むことにした。
息子とそれぞれ左手でページを選び、朗読する。
その中から、わたしの心に引っかかった部分を掲載していこうと思う。
明美ちゃん(岡部明美さん)からはブログへの掲載許可をいただいている。
選 息子
『つながり』より
気づかずにいた・・・
どんなに自分の心とからだを痛めつけて生きていたかということを
心とからだの感受性を鈍くすることで強さを身にまとっていたことを
心とからだは分かちがたくつながりあい私を生かそうとしていたことを
選 わたし
『健康』より
私にとっての健康とは・・・
(中略)
自分を信じられること 自分の生きる力を信頼できること
(中略)
健康は、自分との関係、人との関係、自然との関係と密接につながっていた。
健康になることは、その崩れたバランスを修復してゆくプロセスだった。