「いいよ」
明るく、軽快な声で君は言う。
その声のトーンから、まるで秋の空のように、心が晴れ渡っているのがよくわかる。
君が学校に行けなくなってからほぼ2年。
通っていた学校を3年で卒業できなくなり、行く先の道が暗闇に見えなくなってしまった日々。
その場に留まり続けることを選択した君は、卒業していく仲間達を見送り、自分のペースで高校を卒業する道を選んだ。
あの頃の君はこんなに明るく軽快な声を発することはなかったね。
思えばあの日々は、月明かりもない新月の夜のようなものだったのかもしれない。
あれから月が満ち、君は自らの意志で、この先の道を決めた。
流れに乗って、急かされるように決めるのではなく、留まり、じっくりと、その道を見極めるために、時間が必要だったんだね。
幾度か繰り返される、満ちては欠け、欠けては満ちる月夜が君の中の何かを熟成させたんだ。
今の君には満月に照らされた明るい道が見えているのだろう。
その君が発する声がたまらなく愛おしい。