子ども達が元気に遊んでいる声がこだましている、穏やかな午後。
窓から入ってくる風。
揺られるカーテン。
この季節は部屋に寝転びながら夕焼けが見れる季節だ。
1年のうちのわずか数日のこと。
刻々と高度を下げる太陽が、地平線近くの空をオレンジ色に染めてゆく。
何もしない。
そんな時間を味わいたくて、窓から見える景色を眺めているだけ。
そこには、ただこの時間を味わいたい自分がいる。
前の私なら、こんなことしたくなる時は、たいてい気力がなくて、ヤル気が湧かず、何もする気がおきない自分だった。
でも、今は心地良さしかない。
刻々と色を変えてゆく、夕暮れの空を見ながら想う。
何もしなくていい。
何もしなくても生きてていい。
何もしなくても生きている。
何もしなくても生きていられる。
何もしなくてもこの世界に生きてる価値はある。
ただ生きているだけでいいんだ。
それだけで世界に貢献している。
森に何百年何千年と生きてる木々達は、ただ森に立ち、自分の“生”を全うしてるだけだ。
ただ森に立っているだけで、世界から必要なものを受け取り、世界に必要なものを与えている。
人だって同じだ。
ただこの世界に生きてるだけで、必要なものを誰かに与え、必要なものを受け取って生きてる。
その相互の循環の中で、木々も、人も生きてるんだ。
ただ、ここにいて、存在しているだけで、いい。
その循環の中にある幸せをただただ感じ、味わうことの豊かさに満たされてゆく…
やがて空全体がオレンジ色に染まり、少しずつ褪せながら青い空の世界がやってくる。
地平線近くの雲はオレンジから茜色に染まり、青い空との境目が薄紫色になってゆく。
そして、気がつけば、子ども達の声はいつしか消え、秋の虫たちの鳴き声だけが残っている。
空は青色を深めながら、やがて月と星が瞬く輝夜空になっていた。
今日もいい1日だったなぁ。
人生最後の日はこんな終わり方をしていくのかもしれないな。