ハワイ島にあるは山頂付近まで車道が通じ、とても身近に感じる高山です。
地球上で一番宇宙に近い場所とも言われる天体観測には絶好の場所。
美しい星空や、日の出、夕陽の写真を見ると誰しも行ってみたくなる場所です。
でも、ちょっと待って。
身近に感じる山だからこその“怖さ”があると思っています。
個人的には、マウナ・ケア山へ行くなら、レンタカーを借りて自力で行くことはオススメしません。
理由はたったひとつ。
標高が高いからです。
マウナ・ケア山とは
マウナ・ケアとはマウナ=山、ケア=白い という意味を持つ、ハワイ島にある標高4205mの山です。
天候や大気の影響が少ないため、天体観測に適した場所で、山頂付近には世界10か国13基もの天文台がズラズラッと並ぶ圧巻の光景を見ることができます。
標高4200mがピンとこない方のために具体的に書いてみます。
富士山(3776m)の上にあるスカイツリーの展望回廊(450m)まで行くようなものです。
かえってわかりにくい?(笑)
“白い”と名前につくだけあって、冬季は雪が降ります。
3m積もるのも珍しくないそうですよ。
3m(300cm)積もれば雪深いスキー場並みの積雪ですね。
標高が高いと何が起こるのか
マウナ・ケア山へレンタカーを借りて自力で行くことは、標高の高さが理由と書きました。
標高が高いと何が起こるのでしょう?
気温が下がる
標高が1000m上がると、気温は約6℃下がります。
マウナ・ケア山(4200m)に置き換えますね。
平地との気温差は約25℃。
つまり、ハワイ島のビーチで、気温25℃のとき、山頂付近の気温は0℃です。
数値を見てピンとこない方のために。
気温0℃は東京の真冬の最低気温ぐらいです。
ダウンジャケットが必要なくらいの寒さですね。
これに風が加わると体感温度はもっと下がります。
山頂付近は遮るもののない、吹きさらしの場所です。
数値以上の寒さを考えておいて間違いないでしょう。
つまり、真夏のハワイ島へ行っても、マウナ・ケア山頂は0℃以下、氷点下に感じるということです。
気圧が下がる
標高が1000m上がると、気圧は約100hp下がります。
気温と同じくマウナ・ケア山(4200m)に置き換えると、気圧差は約420hpになります。
つまり、平地を1気圧(1013hp)とすると、山頂付近は気圧は約600hpになるということです。(かなりアバウトな計算ですが。)
台風でもこんな気圧見たことないですね。
この数字を見ただけでも頭が痛くなる人がいるかもしれません。
調べたところ、飛行機の機内で約0.8気圧で、標高に換算すると2000m程度でした。
マウナ・ケア山頂付近の気圧は、登山をしていない方以外では、想像できない世界なんじゃないかと思います。
気圧が下がると何が起きるのか。
空気中の酸素の圧力が下がります。
そして、酸素濃度も下がります。
- 関連 :
- 標高から気圧を計算
平地を100%としたとき、4200mだと約60%です。
いわゆる低酸素状態で、外気だけでなく体内にも影響があります。
そう、つまり、いわゆる高山病(高度障害)が起きてきます。
高度障害(高山病)とは
誰でも起きるあたりまえのこと
人は普段生活している環境(気圧)に適するように体内を調整しながら生きています。
普段とは違う環境、高所に行った時には、外気圧が変わることに体を合わせようとします。
これが高度順化、高所順応と呼ばれるものです。
つまり、高度障害が起きる=高度に体が慣れようとしている ということです。
ここ勘違いしないでくださいね。
人としてあたりまえの反応なんです。
誰にでも起こることだし、起きないことの方がおかしいのです。
一般的には、2500m の高度に急激に登高すると25%に症状が現れ、3500m の高度ではほとんどの人が症状を自覚すると言われています。
- 関連 :
- 急性高山病とは
マウナ・ケア山の標高であれば、ほぼ全員が障害を自覚するわけですね。
高度には慣れることができる
人は高度に体を慣らすことができます。(高度順化、高所順応)
体を高度に「慣らす」わけなので、時間がかかるんですよ。
コトバンクによれば、2-3週間とあります。
時間をかけてゆっくりと高度に体を慣らしていく。
ここ大事です。
とーっても大事です。
先ほど紹介した日本登山医学会のページにも、予防・対策として、『急激に高度を上げすぎないこと』とあります。
そして、この『急激に高度を上げる』ということが、マウナ・ケア山の場合、落とし穴になると思うのです。
マウナ・ケア山ならではの落とし穴
ちょっと待った!
マウナ・ケア山にわずか数時間程度の滞在のために、こんなに時間かけて高度順化なんてやってられないよ!
そう思いませんか?
ごもっともです。
でも、ここが、簡単に車で山頂付近に行けてしまうマウナ・ケア山の落とし穴です。
気軽に山頂付近まで車で行けそうなイメージがありませんか?
実際、ハイウェイからマウナケアに通ずる道は、一部未舗装はあるもののほぼ舗装もされていて、車幅もあります。
日本の林道を走り慣れていれば問題ない道だと感じました。
ノンストップで上がれば1時間もかからずに行けてしまうような道です。
かたや、ガイド付きツアーは決して安い値段ではありませんよね。
だったら自力で行っちゃえ。。。
それこそ、ちょっと待って!!
行った先は低酸素による高度障害があたりまえに起きる4200mの世界です。
途中で休憩して高度順化していっても、何が起きても不思議じゃない世界です。
一般的には頭痛や吐き気と言われますが、全身どこに症状が起きてもおかしくはありません。
脳が一番酸素を消費する臓器だから、影響がわかりやすいだけです。
もちろん、高度障害が起きるとは限りません。
きちんと順応できていれば、頭痛や吐き気は起きにくくなります。
ただ、高度順化していても、走ったりすればたちまちクラッときます。
わたしはうっかり山頂で小走りしたために、その後クラッときちゃいました。
ガイドさんに注意されてなければ、もっと走ってしまい、確実に吐いていたでしょう。
それだけ、きわどい世界です。
日常生活ではあたりまえのことが通用しない、ちょっとしたうっかりが高度障害に繋がる世界です。
個人的に一番怖いと感じたのは、この「うっかり」と眠気です。
頭痛や吐き気といった、明らかな症状なら気をつけようもありますが、知らず知らずのうちにうっかりして、ボーッとしてて、事故を起こす。
気がついた時には事故ってる。
それがあり得る世界なんです。
地元では事故防止のため、レンタカーでの山頂行きは薦めていないはずです。
実際、道から車ごと転落する事故も起きているそうです。
ちなみに、ガードレールはありませんよ。
オニヅカ・ビジター・センターから上は溶岩だけが広がる未舗装道路(ダート)が山頂に繋がっているだけです。
雰囲気は映画でよく見る火星の雰囲気そのものです。(実際にロケ地だし(笑))
ここで事故を起こしても、すぐに救助が来れるところではありません。
事故を起こしたら、その後のいろんな対応で旅の雰囲気も壊れちゃうかもしれません。
ハワイを楽しみに行くんですよね?
マウナ・ケア山の絶景を楽しみに行くんですよね??
大切だからもう一度書きます。
酸素濃度は平地の60%です。
気軽さから来る、高度に対する考えの甘さ。
簡単に行けちゃうから、サクサク進めちゃうから、気がついたらあっという間に4000mを超えるに居れちゃう。
これが一番の怖さだと思います。
せっかくだから、楽しい思い出を持って帰りましょうよ。
高度障害で苦しい想いをするだけでなく、事故まで起こしたら、目も当てられませんものね。
マウナ・ケア山の楽しみ方
簡単に行けちゃう4200mの世界。
13基もの天文台が並ぶ天体観測に絶好の場所。
雲海から昇る太陽、大海原に沈んでゆく夕陽。
楽しむには、心配ごとは全部プロに委ねてしまいましょう。
ガイド付きツアーに参加するのが一番だとわたしは思います。
ツアーガイドさんは高度に対する心配・不安といったところに一番気を配ってくださるんですよね。
せっかくマウナ・ケア山まで来たのだから、その世界を楽しんで欲しい。
そのために最大限のサポートをしてくれる。
そんな存在でした。
ただ連れていくだけじゃなくて、高度障害を起こさないように細心の配慮があり、準備があり、対策があり、ツアーを楽しめるようにと、たくさんの気配りを感じました。
金額じゃありませんよ。
こういう気配りができるガイドさんに巡りあえるだけで、旅の価値、満足度はグンと上がりますよね。
ガイド付きツアーのメリット
簡単にガイド付きツアーのメリットを書いておきましょう。
防寒着を貸してもらえる
実は日本からダウンジャケットやら、スキー用のインナー等を持っていきました。
現地では一切使わず、借りれるものはお借りしました。
というか、薄手のダウンジャケットじゃ寒くていられなかったと思います。
ガイド会社によれば、Tシャツ短パンでも参加できちゃうのが売りだとか。
借りれたのは厳寒地用のダウン上下だったので、全くの寒さ知らずでしたよ。
手袋や耳当てといった小物は山頂に持っていきましたが、使いませんでした。
高度障害に対する細心の気配り
ガイドさんによれば、オニヅカ・ビジター・センターから上で気をつけることは4つでした。
深呼吸する
水をこまめにとる
寝ない
走らない
症状が出てないと、ついつい平地と同じように行動しちゃいますが、マウナ・ケア山で寝る、走るとほぼ確実に吐くそうです。
寝ると呼吸が浅くなるので高度障害を起こしやすくなるんですって。
走るのも同じですね。
ツアー中に何度も、「深呼吸して〜」「水飲んでますかー?」「寝ちゃダメだよー」「走ると吐くよー」と声かけしてくれました。
特に、下山時の寝るなよコールはすごかったです(笑)
寝ないために、下山時の食事提供のタイミングはさすがプロだと思いました。
高度障害を起こした時の安心感
どれだけ気をつけても、なるときにはなっちゃいます。
そんな時のために、エチケット袋はもちろん、簡易酸素ボンベ等を用意されていました。
ツアー参加者の中に、気分が悪くなってしまった方がいて、酸素を吸わせてもらってました。
何よりも心強いのは、ここ3年間は年200日以上マウナ・ケア山に登っているというガイドさんの知識・経験の豊さからくる安心感は非常に心強かったです。
ちなみに、マウナ・ケア山のガイド試験は難関だそうですよ。
まとめ
登山を長年やってますが、4200mという高さは未体験だったため、日本から何を準備していけばいいのか不安だらけ。
高度に対する不安もありました。
しかも、行き先はハワイ。
スーツケースの中は水着からダウンウェアまで入るカオス状態でした(笑)
でも、寒さも、高度も、ガイド付きツアーに参加したことで、心配することなんてひとつもなかった!
日本語ガイドさんのツアーだったのも大正解でしたね。
高度障害を起こした時の微妙なニュアンスを英語で伝えあうのは難しい。
英語でのコミュニケーションに困らないダンナもそう話していました。
ガイドツアー中に、ハワイ島のいろんなことも日本語で聞けてラッキーでした。
個人旅行だと、日本語に触れる機会ってホントないんですよね。
どこへ行くのも大切ですが、誰と行くかも旅の大事な要素ですね。
わたしが参加したツアーはこちらです。
ガイドは日本住んでいたこともある、葉(よう)さん。
カメラの腕前もプロ並みで、わがまま言って、カメラを渡してこんな写真も撮ってもらいました。
ガイドとしてのプロ精神も半端なかったですよ。
次行く時も、ぜひガイドをお願いしたいですね。
最後に、マウナ・ケア山の高度対策にひとこと。
不要な心配はしないこと。
心配ごとはすべて委ねて、楽しむことだけ考えよう!
不用意に怖れて、どうしよう、どうしようと思っていると、なってしまうような気がします。
途中までそんな状態でしたが、吐き気がきたら、吐けば済むことだわ! と、腹を括って深呼吸に徹してたら、落ち着きました。
うっかり走るのだけは気をつけて!
非日常の高度の世界を楽しむ余裕を持って、マウナ・ケア山に行きましょう!
とてつもなく雄大な、地球スケールの景色が待っていますよ。